2021年10月7日 Apache httpd 2.4.51 がリリースされました。10月4日にリリースされた 2.4.50 のパストラバーサルの脆弱性(CVE-2021-41773)への修正が不完全(CVE-2021-42013)であったためわずか3日でのリリースとなりました。すでにこの脆弱性を悪用した攻撃が日本国内でも確認されているとの情報があるため、早急にアップデートを実施する必要があります。そこで今回は CentOS7 および CentOS8、AlmaLinux8、RockyLinux8 に Apache httpd 2.4.51 をインストールする手順をまとめてみました。
参考記事:
Changes with Apache 2.4.51
Complete ChangeLog for 2.4
開発ツールのインストール
Apache httpd や各種ライブラリをソースからコンパイルしますので、パッケージを「最小限のインストール」でインストールしている場合は、基本コマンドと開発ツールをインストールしておきましょう。
yum -y groupinstall development
yum アップデート
インストール済みのパッケージを、最新版にアップデートします。
OSを再起動します。
OpenSSL 1.1.1 のインストール(CentOS7のみ)
CentOS7 の場合は、OpenSSL 1.1.1 をインストールします。
【注意】
CentOS8、AlmaLinux8、RockyLinux8 は、標準で OpenSSL 1.1.1 がインストールされており、ソースから OpenSSL をインストールすると不具合が発生しますので、インストールしないように注意してください。
OpenSSL のコンパイルに必要なパッケージをインストールしておきます。
yum -y install perl-core
OpenSSL 1.1.1 のダウンロード(ダウンロードの前に OpenSSL 1.1.1 の最新リリース を確認しておきましょう)
wget https://www.openssl.org/source/openssl-1.1.1l.tar.gz
OpenSSL 1.1.1 のインストール
cd openssl-1.1.1l/
./config --prefix=/usr/local/openssl-1.1.1l shared zlib
make depend
make
make test
make install
OpenSSL1.1.1 のライブラリにパスを通しておきます。
ldconfig
Nghttp2 のインストール
HTTP/2(mod_http2)のコアエンジン Nghttp2 をインストールします。
Nghttp2 のコンパイルに必要なパッケージをインストールしておきます。
yum -y install libev-devel
yum -y install c-ares-devel
CentOS7 の場合
CentOS7 の場合は、Software Collections(SCL)リポジトリから devtoolset-7 パッケージと Python 3.8 をインストールして有効化しておきます。
yum -y install devtoolset-7
yum -y install rh-python38-python-devel
scl enable devtoolset-7 bash
scl enable rh-python38 bash
Nghttp2 のダウンロード(ダウンロードの前に Nghttp2の最新リリース を確認しておきましょう)
wget https://github.com/nghttp2/nghttp2/releases/download/v1.45.1/nghttp2-1.45.1.tar.gz
Nghttp2 のインストール。環境変数 OPENSSL_CFLAGS と OPENSSL_LIBS に先ほどインストールした、OpenSSL1.1.1 のディレクトリパスを指定してコンパイルします。
cd nghttp2-1.45.1/
env OPENSSL_CFLAGS="-I/usr/local/openssl-1.1.1l/include" \
OPENSSL_LIBS="-L/usr/local/openssl-1.1.1l/lib -lssl -lcrypto" \
./configure --enable-app
make
make install
CentOS8、AlmaLinux8、RockyLinux8 の場合
CentOS8、AlmaLinux8、RockyLinux8 の場合は、Nghttp2 のコンパイルに必要な OpenSSL のライブラリと Python 3.8 をインストールします。
yum -y install python38-devel
Nghttp2 のダウンロード(ダウンロードの前に Nghttp2の最新リリース を確認しておきましょう)
wget https://github.com/nghttp2/nghttp2/releases/download/v1.45.1/nghttp2-1.45.1.tar.gz
Nghttp2 のインストール。
cd nghttp2-1.45.1/
./configure --enable-app
make
make install
以上で HTTP/2 のライブラリ「libnghttp2」が /usr/local/lib/ 以下にインストールされます。Nghttp2 関連のコマンドは /usr/local/bin/ 以下にインストールされます。
Brotli のインストール
Brotli のコンパイルに cmake を使いますので、インストールしておきます。
Brotli のダウンロード(ダウンロードの前に Brotliの最新リリース を確認しておきましょう)
wget https://github.com/google/brotli/archive/refs/tags/v1.0.9.tar.gz
Brotli をコンパイルしてインストールします。
cd brotli-1.0.9/
mkdir out && cd out
../configure-cmake
make
make test
make install
Brotli のライブラリが /usr/local/lib 以下にインストールされます。
ライブラリへのパス追加
HTTP/2 と Brotliのライブラリが「/usr/local/lib」以下にインストールされましたので、ライブラリのパスに追加しておきます。
ldconfig
Apache httpd インストールの下準備
Apache httpd のコンパイルに必要なパッケージをインストールしておきます。
yum -y install expat-devel
また、Apache 2.4系をソースコードからインストールする場合は、APR と APR-util が必要になりますので、インストールしておきます。
APR
wget http://ftp.jaist.ac.jp/pub/apache//apr/apr-1.7.0.tar.gz
tar xvzf apr-1.7.0.tar.gz
cd apr-1.7.0/
./configure
make
make install
APR-util
wget http://ftp.jaist.ac.jp/pub/apache//apr/apr-util-1.6.1.tar.gz
tar xvzf apr-util-1.6.1.tar.gz
cd apr-util-1.6.1/
./configure --with-apr=/usr/local/apr
make
make install
Apache httpd 2.4.51 のインストール
本題の Apache httpd のインストールです。
Apache httpd のソースコードのダウンロード
wget https://ftp.jaist.ac.jp/pub/apache//httpd/httpd-2.4.51.tar.gz
ダウンロードしたソースコードを解凍して、ディレクトリを移動します。
cd httpd-2.4.51/
CentOS7 の場合
Apache httpd をインストールします。CentOS7 の場合は「--with-ssl」オプションで OpenSSL 1.1.1 のインストールディレクトリを指定します。
--enable-http2 \
--enable-brotli \
--with-brotli=/usr/local/lib \
--enable-ssl \
--with-ssl=/usr/local/openssl-1.1.1l \
--with-apr=/usr/local/apr \
--with-apr-util=/usr/local/apr \
--enable-so \
--enable-mods-shared=all \
--enable-mpms-shared=all
 
make
make install
CentOS8、AlmaLinux8、RockyLinux8 の場合
Apache httpd をインストールします。CentOS8、AlmaLinux8、RockyLinux8 の場合は「--with-ssl」オプションの指定は必要ありません。
--enable-http2 \
--enable-brotli \
--with-brotli=/usr/local/lib \
--enable-ssl \
--with-apr=/usr/local/apr \
--with-apr-util=/usr/local/apr \
--enable-so \
--enable-mods-shared=all \
--enable-mpms-shared=all
 
make
make install
以上で Apache が /usr/local/apache2/ 以下にインストールされました。続いてSSLサーバー証明書の作成と、Apacheの設定を行います。
自己署名のSSLサーバー証明書の作成
HTTP/2 および Brotli は HTTPS が必須になりますので Apache の設定の前に、SSLサーバー証明書を作成しておきます。
秘密鍵の作成
CSR(証明書署名要求)の作成(入力するのは Country Name と Common Name の2箇所だけです)
Country Name (2 letter code) [XX]:JP
State or Province Name (full name) []:<空エンター>
Locality Name (eg, city) [Default City]:<空エンター>
Organization Name (eg, company) [Default Company Ltd]:<空エンター>
Organizational Unit Name (eg, section) []:<空エンター>
Common Name (eg, your name or your server's hostname) []:www.example.com
Email Address []:<空エンター>
Please enter the following 'extra' attributes
to be sent with your certificate request
A challenge password []:<空エンター>
An optional company name []:<空エンター>
SSLサーバー証明書の作成(有効期限30年)
秘密鍵とSSL証明書を移動
mv -i server.crt /etc/pki/tls/certs/
パーミッションを変更
chmod 600 /etc/pki/tls/certs/server.crt
SELinux を有効にしている場合は、秘密鍵とSSL証明書に正しいセキュリティコンテキストをつけておきましょう。(Apache httpd 起動時にエラーが発生することがあります)
restorecon /etc/pki/tls/certs/server.crt
CSRを削除
Apache httpd の設定
オリジナルの設定ファイルをバックアップ
mv -i /usr/local/apache2/conf/extra/httpd-ssl.conf /usr/local/apache2/conf/extra/httpd-ssl.conf.org
・設定ファイルを作成します
vim /usr/local/apache2/conf/httpd.conf
vim /usr/local/apache2/conf/extra/httpd-ssl.conf
systemd サービスファイルの作成
Apache httpd 用の systemd サービスファイル(起動スクリプトのようなもの)を作成します。
vim /etc/systemd/system/httpd.service
Description=The Apache HTTP Server
After=network.target remote-fs.target nss-lookup.target
[Service]
Type=forking
ExecStart=/usr/local/apache2/bin/apachectl start
ExecReload=/usr/local/apache2/bin/apachectl graceful
ExecStop=/usr/local/apache2/bin/apachectl stop
[Install]
WantedBy=multi-user.target
作成したサービスファイルを systemd に反映
systemd に反映されているか確認
httpd.service disabled ←この表示があればOK
起動
自動起動設定
firewalld設定
HTTP(80/tcp) と HTTPS(443/tcp) を開けておきます。
firewall-cmd --add-port=443/tcp --permanent
firewall-cmd --reload
・確認
firewall-cmd --list-all
interfaces: enp0s3 enp0s8
sources:
services: dhcpv6-client ssh
ports: 443/tcp 80/tcp ←この表示があればOK
(略)
ログのローテーション設定
・設定ファイルを作成します
vim /etc/logrotate.d/httpd
/usr/local/apache2/logs/*log { daily missingok dateext rotate 60 create 644 daemon daemon sharedscripts postrotate /bin/systemctl reload httpd.service > /dev/null 2>/dev/null || true endscript }
・確認します
logrotate -dv /etc/logrotate.d/httpd
-----(下記のような表示であればOKです)-----
Handling 1 logs
rotating pattern: /usr/local/apache2/logs/*log after 1 days (60 rotations)
empty log files are rotated, old logs are removed
(略)
以上です。設定お疲れ様でした!
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