AlmaLinux と Rocky Linux の比較メモ(2024年2月版)

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CentOS Linux の提供が終了したことを受けて、CentOS の代わりとなる「AlmaLinux(アルマリナックス)」と「Rocky Linux (ロッキーリナックス)」という2つの新しい Linux ディストリビューションが開発されました。どちらも CentOS Linux と同じく RHEL(Red Hat Enterprise Linux)互換のため CentOS ほぼ同じように使えることが魅力です。しかし CentOS の乗り換え先を AlmaLinux にするか Rocky Linux にするか、迷うところではないでしょうか? そこで今回は、2024年2月現在の AlmaLinux と Rocky Linux の状況を調べてみました。

AlmaLinux と Rocky Linux の比較

2024年2月4日現在の AlmaLinux と Rocky Linux の状況です。

開発コミュニティやメインスポンサーは違いますが、AlmaLinux と Rocky Linux どちらも安定性の重視を方針とし、最短でも2029年までサポートされる予定です。

名称AlmaLinux(アルマリナックス)Rocky Linux(ロッキーリナックス)
URL(日本語)https://almalinux.org/ja/https://rockylinux.org/ja/
名前の由来Alma とは、スペイン語をはじめとするラテン語で魂を意味します。思い起こすと、Linux がこれほどまでに普及し、浸透しているのは、情熱的で多様な開発者コミュニティの努力の賜物であることがよくわかります。このコミュニティこそが Linux の魂であり、Linux ディストリビューションに依存するすべての人が、Linux コミュニティの努力に感謝しています。そこで、新しいディストリビューションをAlmaLinux OS と名付けました。(引用元:https://almalinux.org/ja/)CentOSの初期に振り返ると... 私(=Rocky Linuxの設立者のグレゴリー・クルツァー氏)の共同創設者はRocky McGaughでした。彼はもういません。だから、CentOSの成功を見届けることができなかった彼に敬意を表して紹介します... Rocky Linux です。(引用元:https://rockylinux.org/ja/about)
方針AlmaLinux はオープンソースで永久無料のエンタープライズLinuxディストリビューションであり、コミュニティによって管理され、長期的な安定性と堅牢な生産グレードのプラットフォームに焦点を当てています。AlmaLinux OSはRHEL®とABI互換です。(引用元:https://wiki.almalinux.org/ より機械翻訳)Rocky Linuxは、定期的なアップデートと10年間のサポートライフサイクルによる確かな安定性を提供し、すべて無償で提供されるエンタープライズ対応製品です。(引用元:https://rockylinux.org/ja/)
RHELとの互換性AlmaLinux OS Foundation理事会は本日(2023年7月13日)、RHELと1:1になることを目指すことを取りやめることを決定した。AlmaLinux OSはその代わりにアプリケーション・バイナリ・インターフェース(ABI)互換*を目指します。
* 私たちの場合のABI互換性とは、RHEL(またはRHELクローン)上で動作するようにビルドされたアプリケーションがAlmaLinux上で問題なく動作することを保証するための作業を意味します。
(引用元:https://almalinux.org/ja/blog/future-of-almalinux/ より機械翻訳)
バグまで含めた100%の互換性
開発コミュニティThe AlmaLinux OS FoundationRocky Enterprise Software Foundation
メインスポンサーCloudLinux IncCIQ(グレゴリー・クルツァー氏の会社)
その他のスポンサーやパートナーAWS、Microsoft Azure、arm、EQUINIXなどAWS、Google Cloud、arm、EQUINIXなど
サポート期間(8.x)アクティブサポートは2024年5月1日まで、セキュリティサポートは2029年3月1日までを予定アクティブサポートは2024年5月31日まで、サポート終了は2029年5月31日を予定
サポート期間(9.x)アクティブサポートは2027年5月31日まで、セキュリティサポートは2032年5月31日までを予定アクティブサポートは2027年5月31日まで、サポート終了は2032年5月31日を予定
8.4のリリース日2021-05-26(遅延8日)2021-06-21(遅延34日)
8.5のリリース日2021-11-12(遅延3日)2021-11-15(遅延6日)
8.6のリリース日2022-05-12(遅延2日)2022-05-16(遅延6日)
8.7のリリース日2022-11-10(遅延1日)2022-11-11(遅延2日)
8.8のリリース日2023-05-18(遅延2日)2023-05-20(遅延4日)
8.9のリリース日2023-11-21(遅延7日)2023-11-22(遅延8日)
9.0のリリース日2022-05-26(遅延9日)2022-07-14(遅延58日)
9.1のリリース日2022-11-16(遅延1日)2022-11-26(遅延11日)
9.2のリリース日2023-05-10(遅延0日)2023-05-16(遅延6日)
9.3のリリース日2023-11-13(遅延6日)2023-11-20(遅延13日)
対応しているアーキテクチャ(8.9)x86_64、ARM64、ppc64le、s390xx86_64、ARM64
対応しているアーキテクチャ(9.3)x86_64、ARM64、ppc64le、s390xx86_64、ARM64、ppc64le、s390x
ソースコードのリポジトリhttps://github.com/AlmaLinux/https://github.com/rocky-linux/
CentOS Linux 8 などからの移行ツール有り(almalinux-deploy
有り(rocky-tools
主なパートナーOpenLogicサイバートラストCIQMontaVista
その他の活動ペンギン財団への寄付(About - Shop Almalinux

参考資料:
AlmaLinux Release Notes
Rocky Linux Release Version Guide
Red Hat Enterprise Linux のリリース日

クラウドサービスなどの対応状況

続いて、2024年2月4日現在のメガクラウド3社と国産クラウドおよびVPSにおける AlmaLinux と Rocky Linux の対応状況です。

ご利用の際は、公式の最新情報をご確認ください。

AlmaLinuxRocky Linux
AWS(EC2)
Microsoft Azure(VM)○*1○*1
Google Cloud(Compute Engine)○*2
さくらのクラウド
IIJ GIOインフラストラクチャーP2
さくらのVPS
ConoHa VPS
KAGOYA CLOUD VPS

*1)Marketplace からの提供
*2)Marketplace からの提供

動作検証

実際に CentOS Linux 8 で稼働していた本番環境(とはいってもこのブログサイトですが)を AlmaLinux 8 で構築した LAMP環境、Rocky Linux 8 で構築した LAMP環境にそれぞれ移行してみましたが、問題なく動作しています。

関連記事:
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どちらを選べばいいの?

AlmaLinux と Rocky Linux は両方とも素晴らしい Linux ディストリビューションです。どちらを選んでもまったく問題ありません。

ただし、2023年6月 Red Hat は git.centos.org リポジトリの更新を停止したため、このリポジトリからソースコードを取得してビルドしていた AlmaLinux や Rocky Linux など、RHELクローンと呼ばれる Linux ディストリビューションは、ソースコードの取得先の変更を求められています。そのため、今後の各社の動きに注目しておく必要があります。

この件については、次のセクションにまとめてみました。

Linux エコシステムの切断(2023年6月)

これまで Red Hat は、RHEL(Red Hat Enterprise Linux)のアップデートがあると、そのソースコードを git.centos.org リポジトリにプッシュして公開していました。git.centos.org で公開されているソースコードは、Red Hat のガイドライン を遵守することを条件にビルドして再配布することが可能です。こうして再配布されいる(されていた)Linux ディストリビューションが AlmaLinux や Rocky Linux です。

この一連の流れは「Linux エコシステム」などと呼ばれます。上の図では省略していますが、CentOS Stream の上流(「アップストリーム」とも呼ばれます)には Fedora Linux が、そのさらに上流には Apache や OpenSSL などのオープンソースプロジェクトがあり、他の Linux ディストリビューションも含めて Linux エコシステムが形成されています。

しかし、2023年6月 この Linux エコシステムの一部が切断されました。

2023年6月21日 Red Hat は、「CentOS Stream は今後、RHEL 関連のソースコード公開のための唯一のリポジトリとなります」と発表しました。この発表は、Red Hat は今後 git.centos.org リポジトリを更新しないということを意味しています。実際に、この数日前から git.centos.org リポジトリが更新されていないことが、AlmaLinux の開発メンバーの方によって確認されています。

AlmaLinux や Rocky Linux は、自身の Linux ディストリビューションだけではなく、上流の Fedoraプロジェクトやオープンソースプロジェクトにも貢献しているため、この切断により Linux エコシステムになんらかの影響があることは間違いないでしょう。

各社の主張

各社の主張には当然違いがありますが、Linux エコシステムひいては、オープンソースコミュニティの発展を願い、貢献するという考えは一致しているのが興味深いところです。各社の手段は違いますが、目指すところは一緒なのかもしれませんね。

Red Hat
Red Hat’s commitment to open source: A response to the git.centos.org changes

AlmaLinux
Our Value Is Our Values

Rocky Linux
Keeping Open Source Open

各社の動き

AlmaLinux の対応

2023年7月13日、AlmaLinux は、RHELと1:1(完全クローン)を目指すことを取りやめると発表しました。今後 AlmaLinux は、RHEL との ABI(アプリケーション・バイナリ・インターフェース)互換を目指すとしています。AlmaLinux が定義する ABI互換性とは、RHEL(またはRHELクローン)上で動作するようにビルドされたアプリケーションが AlmaLinux 上で問題なく動作することを保証するための作業を意味します。

参考資料:The Future of AlmaLinux is Bright

Rocky Linux の対応

2023年8月10日、Rocky Linux のメインスポンサーとなる CIQ(Rocky Linuxの設立者のグレゴリー・クルツァー氏の会社)は、Oracle、SUSE と共に OpenELA(Open Enterprise Linux Association)を設立すると発表しました。

参考資料:CIQ, Oracle and SUSE Create Open Enterprise Linux Association for a Collaborative and Open Future | OpenELA

2023年11月2日 git.centos.org リポジトリの代わりとなる OpenELAのリポジトリ が公開されました。これは私の推測ですが、Rocky Linux や Oracle Linux、SUSEが新たに開発しているRHEL互換のディストリビューションは、OpenELA のダウンストリームになることが予想されます。

参考資料:OpenELA Marks Major Milestones in Governance and Code Availability

おわりに

現在のようにデジタル化が進んだ社会においてオープンソースである Linux は、生活に欠かすことのできない共有財産です。もし AlmaLinux や Rocky Linux など無料の Linux ディストリビューションを利用するのであれば、どのような形でも構わないので開発コミュニティへの参加や支援することをオススメします。

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