Aragon の使い方 DAO(分散型自律組織)を作ってみよう!

ブロックチェーン
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Aragon(アラゴン)は、DAO(「ダオ」と読みます)を構築するためのツールや知識を提供してくれるサービスです。DAO の運営には、スマートコントラクト(ブロックチェーンにブログラムを保存し実行できる仕組み)による投票システムなどの開発が必須なのですが、Aragon のツールを使えば、DAO のメインシステムとなるスマートコントラクトを簡単に作成することができます。そこで今回は、Aragon を使った DAO の作成手順をまとめてみました。

DAO とは?

DAO(ダオ)とは、Decentralized Autonomous Organization の略称で、「分散型自律組織」と和訳されます。(自律分散型組織と呼ばれることもありますが、まったく同じ意味と考えて問題ありません)

株式会社などの中央集権型組織では、組織の代表者や取締役会が意思決定を行い組織を運営しますが、DAO すなわち「分散型自律組織」では、組織のメンバーが全員参加して意思決定を行います。

DAOは全員参加のイラスト

具体的には、DAO のメンバーにトークンと呼ばれる投票権(ガバナンストークン)を配布して、メンバーはそのトークンによって、組織の決議事項に投票をして意思決定を行い組織を運営していきます。

トークンを配布するシステムや、それによる投票システムは、スマートコントラクト(ブロックチェーンにブログラムを保存し実行する仕組み)を使って開発する必要があるのですが、Aragon を使えば、ブログラムの知識がなくても簡単にこれらのシステムを作成することができます。

ではさっそく、Aragon で DAO を作成してみましょう。

MetaMask のインストール

Aragon を利用するには、ブロックチェーンを扱うための「ウォレット」が必要になります。2022年11月現在 Aragon が対応しているウォレットおよびウォレットとの接続方法は次の通りです。

Aragonが対応しているウォレットと接続方法

今回は、ソフトウェアウォレットでは定番の MetaMask(メタマスク)という、ウォレットをインストールして Aragon と接続します。インストール方法や設定方法は、以下の記事をご参照ください。

MetaMask(メタマスク)の安全な使い方

MetaMask は、無料で利用できます。また、今回はテストネットと呼ばれるテスト用のブロックチェーンを使いますので、イーサリアムなどの暗号資産の購入は必要ありません。

テストネットへの接続とトークンの取得

2022年11月現在 Aragon は、以下のブロックチェーンに対応しています。

Aragonが対応しているブロックチェーン

今回は Polygon Mumbai(ポリゴン・ムンバイ)というテストネットに接続してトークンを取得し、DAO を作成します。

その名の通りテスト用のブロックチェーンですので、本番では使えません。また、テストネットは定期的に廃止されますので、実際のプロジェクトで運用する DAO を作成する場合は、本番(メインネット)のイーサリアムなどを購入してください。

参考資料:イーサリアムが3つのテストネット廃止へ、PoS移行後に | あたらしい経済

Polygon Mumbai テストネットに接続

MetaMask のネットワーク選択メニューから「ネットワークを追加」をクリックします。

Polygon Mumbai のネットワーク情報を入力して「保存」をクリックします。(「Matic」は Polygon の昔の名前です。ドキュメントなどでは表記が混在していますので Matic = Polygon とお考えください)

ネットワーク名Matic Mumbai
新しいRPC URLhttps://rpc-mumbai.maticvigil.com/
チェーンID80001
通貨記号MATIC
ブロックエクスプローラーのURLhttps://mumbai.polygonscan.com/

参考資料:Add Polygon Network | Polygon Technology Documentation

「Matic Mumbai」というネットワークが追加されていれば、Polygon Mumbai テストネットへの接続完了です。

トークンの取得

続いて Polygon Mumbai のテストトークンを取得します。ウォレットアドレスをコピーしておいてください。

Polygon Faucet (テストトークンの配布所)ページを開きます。

Network「Mumbai」、Select Token「MATIC Token」を選択し、Wallet Address にウォレットアドレスをコピペして「Submit」をクリックします。

確認画面が表示されますので、間違いのないことを確認して「Confirm」をクリックします。

数分待つとウォレットにテストトークンが送られてきます。テストトークンが足りない場合は、時間を空けてトークンの取得を繰り返してください。

DAO の作成

Aragon と MetaMask の接続

まずはじめに Aragon と MetaMask を接続します。(アカウント登録のようなものとお考えください)

(補足)Web2.0系のサービスでは、サービスを使う時にアカウント登録を行うことで本人を識別していますが、Aragon など web3系のサービスはブロックチェーンを基盤として作られているため、一般的にアカウント登録は必要なく、その代わりに MetaMask などのウォレットと接続することで本人を識別しています。

Aragon トップページ の「Create your DAO」をクリックします。

Aragon トップページ

MetaMask で、「Matic Mumbai」ネットワークが選択されていることを確認してください。

ページ右上の「Connect account」をクリックします。

MetaMask をクリックします。

はじめて Aragon に接続する場合は、MetaMask で確認画面が表示されます。
URLが「https://client.aragon.org」であることを確認して「次へ」をクリックします。

Aragon に許可する操作内容を確認して「接続」をクリックします。

以下が表示されれば Aragon と MetaMask の接続完了です。

DAO の作成

いよいよ本題の DAO の作成です。「Create an organization」をクリックします。

テンプレートを選択します。作成する DAO の運営方針に適したテンプレートを選択してください。

Company譲渡可能なトークンを使用して、組織の所有権を表します。決定は、ステーク加重投票に基づいて行われます。
Membership譲渡不可のトークンを使用してメンバーシップを表します。決定は、1 メンバー 1 票のガバナンスに基づいて行われます。
Reputation譲渡不可のトークンを使用して評判を表します。決定は、評判に重み付けされた投票を使用して行われます。

今回は、シンプルな Membership を選択しました。「View details」→「Use this template」で選択できます。

DAO の名前を入力して「Next: Configure template」をクリックします。DAO の名前は後から変更できないので注意してください。

DAO の投票設定です。今回はそのまま「Next: Configure template」をクリックします。

DAO トークンの名前と、短縮名(大文字)を入力し、TOKEN HOLDERS にトークン(投票権)の配布先のウォレットアドレスを入力して「Next: Review information」をクリックします。(トークンは後からでも配布できます)

DAO 構成設定の最終確認です。間違いがないことを確認して「Launch your organization」をクリックします。

MetaMask に Aragon への支払いの確認画面が表示されます。下にスクロールして数量に問題のないことを確認したら「確認」をクリックします。

しばらく待って以下のような画面が表示されれば DAO の作成完了です。「Get started」をクリックしてください。

Aragon を使った DAO の作成手順は以上です。DAO(分散型自律組織)をお楽しみください!

DAO も最初は中央集権型組織

賢明な方は、ここまでの Aragon を使った DAO の作成手順を見て「いやいや、これは中央集権型組織でしょ!」と思われたかもしれません。ある意味それは正しいのです。

DAO の立ち上げ時点では、DAO の発起人もしくはコアチームが DAO の運営やトークンの配布を行うため、株式会社などの中央集権型組織と変わりありません。世界的にも完璧に DAO(分散型自律組織)と呼べるのはビットコインくらいだと言われていますので、「DAO を目指す組織」と呼ぶのが適切かもしれません。

DAO の運営については、実際に DAO 目指している Stake Technologies株式会社の創業者、渡辺創太氏の説明がとても分かりやすいです。

おわりに(次世代型の組織)

産業革命からの約200年間で、人類には多くの富や健康がもたらされました。これは、中央集権型組織がなければ実現できなかったでしょう。

しかし2022年現在、中央集権型組織に代表される現在の組織モデルは、多くの人の尊厳を奪い、地球環境にも悪影響があることから持続可能では無く、もはや限界だと言われています。そこで注目されているのが、ティール組織やホラクラシー組織といった次世代型の組織です。

次世代型の組織の特徴は、「セルフマネジメント」「全体性」「存在目的」です。言葉こそ違いますが、プロジェクトの目的を達成するために全体性を維持しながらメンバーが自律的に活動する DAO(分散型自律組織)の考え方とまったく同じです。

組織は放っておくと中央集権型になってしまうため、セルフマネジメントを求める次世代型の組織は、その実現方法が課題でしたが、ブロックチェーンの発明とスマートコントラクトにより Aragon のように誰でも DAO を作れるサービスが提供されている現在では、次世代型の組織を運営するためのITシステム的な課題は解決されたと言ってもいいでしょう。

大手コンサルタント会社で長年組織改革プロジェクトに携わった後、新しい組織モデルの調査研究を行なっているフレデリック・ラルー氏の書籍「ティール組織」にも次のように書かれています。

人類は、進化の乱雑で統制不可能な性質を恐れるあまり、これまでは融通の利かない型に従って組織を運営してきたが、もしかすると、ようやく大きな飛躍の準備ができたのかもしれない。

フレデリック・ラルー「ティール組織」(P485) より引用

歴史上最初の帝国と言われている、アッカド帝国が繁栄していた紀元前2250年頃を中央集権型組織の始まりだとすると、それから現在までの4000年以上の間で人類はとてつもない進化を遂げてきましたが、組織モデルにおいてはアッカド帝国とほとんど変わりありません。そろそろ人類が新しい組織モデルに進化する時が来ているのかもしれませんね。

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