統計学の回帰分析を使うと、身長と体重のような2つのデータから、回帰直線「体重 = 身長 × 回帰係数 + 切片」(上のグラフの赤線のことです)を求め、身長から体重を予測することができます。例えば、気温からビールの売れ行きを予測したり、天気から来客数を予測したりと、仕事にも活用できそうですね。そこで今回は、回帰分析の一番のキモ「回帰係数」(「回帰直線の傾き」ともいいます)の求め方をわかりやすくまとめてみました。
例題
下の表は、あるメーカーの、商品A と 商品B の販売個数です。商品Aの販売個数によって、商品Bの売れ行きを予測したいと思います。予測のための回帰係数を求めてみましょう。
回帰係数を求める式
回帰係数は、以下の計算式で求められます。
回帰係数を求めるには、はじめに「相関係数」を求める必要があります。相関係数の求め方は「5分で分かる!相関係数の求め方」をご参照ください。(例題も同じです)相関係数を求める過程で、商品Aと商品Bの標準偏差も求めることができます。
回帰係数の計算
相関係数の計算おつかれさまでした!
求めた相関係数と、商品Aと商品Bの標準偏差は以下の値になっていると思います。
商品A の 標準偏差: 21.56
商品B の 標準偏差: 26.42
あとは、回帰係数を求める式 相関係数 ×( 商品Bの標準偏差 ÷ 商品Aの標準偏差 ) に当てはめて、計算するだけです。
切片の計算
せっかくなので、切片も計算してみましょう。切片は、以下の計算式で求められます。
回帰係数は先ほど求めた「1.06」、商品Aの平均は「40.8」、商品Bの平均は「59.6」になりますので、これを式に当てはめて計算します。
商品Bの売れ行きの予測
回帰係数と切片が求められましたので、回帰直線は「商品B = 商品A × 1.06 + 16.3」となります。
例えば、商品Aを100個注文した取引先には、商品Bが「100 × 1.06 + 16.3 = 122」個くらい売れると予測することができます。
「R」3行で出来る!回帰係数の求め方
手計算で回帰係数を求めるのはかなり大変ですが、統計解析ソフトの「R」を使えば、わずか3行のコマンドを入力するだけで、回帰係数を求められます。
lm関数の「~」の左側に予測したい変数(商品B)、右側に予測に使われる変数(商品A)を設定して実行します。商品Aの下に表示されている値が回帰係数、(Intercept) の下の値が切片です。
> 商品A = c(12, 38, 28, 50, 76) > 商品B = c(28, 35, 55, 87, 93) > lm( 商品B ~ 商品A ) Call: lm(formula = 商品B ~ 商品A) Coefficients: (Intercept) 商品A 16.329 1.061
また、summary関数を合わせて使うことで、より詳しい結果を表示できます。
> summary(lm(商品B~商品A)) Call: lm(formula = 商品B ~ 商品A) Residuals: 1 2 3 4 5 -1.056 -21.630 8.975 17.643 -3.932 Coefficients: Estimate Std. Error t value Pr(>|t|) (Intercept) 16.3290 16.3574 0.998 0.392 商品A 1.0606 0.3545 2.992 0.058 . --- Signif. codes: 0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 Residual standard error: 17.09 on 3 degrees of freedom Multiple R-squared: 0.749, Adjusted R-squared: 0.6653 F-statistic: 8.952 on 1 and 3 DF, p-value: 0.05803
簡単に回帰直線を描くこともできます。
> plot(商品A,商品B) > abline(lm(商品B~商品A))
終わりに
冒頭にも書きましたが、回帰分析は統計学を使った分析の中でも、特に仕事に活用しやすい分析手法だと思います。実際に回帰分析を行う手順は「Rによるやさしい統計学」がとても参考になりました。この書籍はRの使い方を覚えながら、統計学を基礎から学べる内容になっていますので、統計学をこれから学びたい方にもオススメです。
コメント
懐かしい内容が満載ですね。
また、解説が非常にわかりやすく部下への説明が簡単になりました。
ありがとうございます。
>Jinchuanさん
コメントありがとうございます。
この記事が少しでもお役に立ててよかったです。
とても分かりやすく、助かりました。
ありがとうございます。
>salasaさん
こちらこそコメントありがとうございます。
この記事がお役にたてて良かったです。