Apache httpd は、バージョン2.4.17以上で HTTP/2 に対応していますが、バージョン2.4.18~2.4.20には、HTTP/2通信時にクライアント証明書認証が回避される脆弱性(CVE-2016-4979)が存在します。クライアント証明書認証が使われるのは珍しいケースかと思いますが、念のためこの脆弱性が対応されているバージョン2.4.23以上を使うことをオススメします。そこで今回は、CentOS7.2に Apache 2.4.23 と mod_http2 をインストールする手順をまとめてみました。
この記事を書くのにあたって「HTTP/2とTLSの間でapacheがハマった脆弱性(CVE-2016-4979) | ぼちぼち日記」を参考にさせて頂きました。この脆弱性の原因となったHTTP/2プロトコルの仕組と課題を、とても分かりやすく解説されています。
ChangeLog for 2.4.23
Apache httpd 2.4.23 の変更履歴を見てみると、冒頭でクライアント認証処理への対応が行われたことが確認できます。
Changes with Apache 2.4.23
*) mod_ssl: reset client-verify state of ssl when aborting renegotiations.
[Erki Aring <erki@example.ee>, Stefan Eissing]http://www.apache.org/dist/httpd/CHANGES_2.4.23 より引用
バージョン2.4.17以降は、HTTP/2に関する変更やバグフィックスがかなり多くなっています。常に最新バージョンを確認しておくのが良さそうですね。
開発ツールのインストール
Apache httpd や各種ライブラリをソースからコンパイルしますので、CentOS7.2を「最小限のインストール」でインストールしている場合は、基本コマンドと開発ツールをインストールしておきましょう。
yum -y groupinstall development
OpenSSL 1.0.2 のインストール
ALPN(Application-Layer Protocol Negotiation)に対応している、OpenSSLバージョン1.0.2以上をインストールします。
Google Chrome バージョン51以降は、NPNが削除され、ALPNのみ対応となったようですので、WEBサーバでHTTP/2を使うには、事実上OpenSSL1.0.2以上が必須になります。
Transitioning from SPDY to HTTP/2 | Chromium Blog
まずはじめに OpenSSLのコンパイルに zlib を使うので、インストールしておきます。
OpenSSLのインストール(そこそこの時間がかかります)
wget https://www.openssl.org/source/openssl-1.0.2h.tar.gz
tar xvzf openssl-1.0.2h.tar.gz
cd openssl-1.0.2h/
./config --prefix=/usr/local/openssl-1.0.2h shared zlib
make depend
make
make test
make install
OpenSSL1.0.2 のライブラリにパスを通しておきます。
ldconfig
Nghttp2 のインストール
HTTP/2(mod_http2)のコアエンジン Nghttp2 をインストールします。
Nghttp2 が必要とするライブラリのインストール
Nghttp2 のダウンロード
※頻繁にバージョンアップされているようです。ダウンロードの前に最新リリースを確認しましょう。
https://github.com/tatsuhiro-t/nghttp2/releases/latest
wget https://github.com/nghttp2/nghttp2/releases/download/v1.12.0/nghttp2-1.12.0.tar.gz
Nghttp2 のインストール。環境変数 OPENSSL_CFLAGS と OPENSSL_LIBS に先ほどインストールした、OpenSSL1.0.2 のディレクトリパスを指定してコンパイルします。
cd nghttp2-1.12.0/
autoreconf -i
automake
autoconf
env OPENSSL_CFLAGS="-I/usr/local/openssl-1.0.2h/include" OPENSSL_LIBS="-L/usr/local/openssl-1.0.2h/lib -lssl -lcrypto" ./configure
make
make install
/usr/local/lib 以下に「libnghttp2」がインストールされますので、こちらもライブラリのパスに追加しておきます。
ldconfig
Apache httpd インストールの下準備
Apache 2.4系を、ソースコードからインストールする場合は、APR と APR-util が必要になりますので、インストールしておきます。
APR
wget http://ftp.jaist.ac.jp/pub/apache//apr/apr-1.5.2.tar.gz
tar xvzf apr-1.5.2.tar.gz
cd apr-1.5.2/
./configure
make
make install
APR-util
wget http://ftp.jaist.ac.jp/pub/apache//apr/apr-util-1.5.4.tar.gz
tar xvzf apr-util-1.5.4.tar.gz
cd apr-util-1.5.4/
./configure --with-apr=/usr/local/apr
make
make install
また、PCREライブラリも必要になるので、インストールします。
Apache httpd 2.4.23 (mod_http2) のインストール
本題の Apache httpd のインストールです。
Apache httpd のソースコードのダウンロード
wget http://ftp.riken.jp/net/apache//httpd/httpd-2.4.23.tar.gz
ダウンロードしたソースコードを解凍して、ディレクトリを移動します。
cd httpd-2.4.23/
HTTP/2 を使うために必要なモジュール mod_http2 と mod_ssl を有効にし、--with-ssl オプションで、OpenSSL1.0.2 のディレクトリパスを指定してインストールします。
--enable-http2 \
--enable-ssl \
--with-ssl=/usr/local/openssl-1.0.2h \
--enable-so \
--enable-mods-shared=all \
--enable-mpms-shared=all
make
make install
以上で Apache が /usr/local/apache2/ 以下にインストールされました。続いてSSLサーバー証明書の作成と、Apacheの設定を行います。
自己署名のSSLサーバー証明書の作成(HTTPS用)
HTTP/2 は事実上 HTTPS が必須になりますので、Apacheの設定の前に、SSLサーバー証明書を作成しておきます。
秘密鍵の作成
CSR(証明書署名要求)の作成(入力するのは2箇所だけです)
Country Name (2 letter code) [XX]:JP
State or Province Name (full name) []:<空エンター>
Locality Name (eg, city) [Default City]:<空エンター>
Organization Name (eg, company) [Default Company Ltd]:<空エンター>
Organizational Unit Name (eg, section) []:<空エンター>
Common Name (eg, your name or your server's hostname) []:www.example.com
Email Address []:<空エンター>
Please enter the following 'extra' attributes
to be sent with your certificate request
A challenge password []:<空エンター>
An optional company name []:<空エンター>
SSLサーバー証明書の作成(有効期限10年)
秘密鍵とSSL証明書を移動
mv -i server.crt /etc/pki/tls/certs/
パーミッションを変更
chmod 600 /etc/pki/tls/certs/server.crt
CSRを削除
Apache httpd の設定
オリジナルの設定ファイルをバックアップ
mv -i /usr/local/apache2/conf/extra/httpd-ssl.conf /usr/local/apache2/conf/extra/httpd-ssl.conf.org
・設定ファイルを作成します
vim /usr/local/apache2/conf/httpd.conf
vim /usr/local/apache2/conf/extra/httpd-ssl.conf
systemd サービスファイルの作成
Apache httpd 用の systemd サービスファイル(起動スクリプトのようなもの)を作成します。
vim /etc/systemd/system/httpd.service
Description=The Apache HTTP Server
After=network.target remote-fs.target nss-lookup.target
[Service]
Type=forking
ExecStart=/usr/local/apache2/bin/apachectl start
ExecReload=/usr/local/apache2/bin/apachectl graceful
ExecStop=/usr/local/apache2/bin/apachectl stop
[Install]
WantedBy=multi-user.target
作成したサービスファイルを systemd に反映
systemd に反映されているか確認
httpd.service disabled ←この表示があればOK
起動
自動起動設定
firewalld設定
HTTP(80/tcp) と HTTPS(443/tcp) を開けておきます。
firewall-cmd --add-port=443/tcp --permanent
firewall-cmd --reload
・確認
firewall-cmd --list-all
interfaces: enp0s3 enp0s8
sources:
services: dhcpv6-client ssh
ports: 443/tcp 80/tcp ←この表示があればOK
(略)
ログのローテーション設定
・設定ファイルを作成します
vim /etc/logrotate.d/httpd
/usr/local/apache2/logs/*log { daily missingok dateext rotate 60 create 644 daemon daemon sharedscripts postrotate /bin/systemctl reload httpd.service > /dev/null 2>/dev/null || true endscript }
・確認します
logrotate -dv /etc/logrotate.d/httpd
-----(下記のような表示であればOKです)-----
Handling 1 logs
rotating pattern: /usr/local/apache2/logs/*log after 1 days (60 rotations)
empty log files are rotated, old logs are removed
(略)
以上です。設定お疲れ様でした!
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